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●妊産婦死亡と安全な中絶

● 事実

 妊産婦死亡率の統計は、開発途上国と先進国との間の不公平さをもっとも適格に反映する保健指標です。後発開発途上国では17人に1人の女性が妊娠・出産の合併症で死亡しています。これに対して先進国ではこのような死亡は4000人のうちの1人に過ぎません。

 

● 世界の妊産婦死亡率(対出生10万件)

・妊娠・出産の合併症は、いまだに、開発途上国での妊娠可能な年齢の女性の主要な死因、病気や障がいの原因です。

・毎年、妊娠・出産の合併症によって約52万9000人の女性が死亡しており、その99%は途上国で起きています。

・先進国では女性が生命を守るための医療対応を利用できるので、妊産婦が死亡することはまれです。

・死亡する女性の約20倍の人数の女性が、妊娠・出産に伴い長期間にわたる障がいや疾病を被ります。

・妊産婦死亡のうち約10万件は、子どもをほしくない女性が有効な避妊法を利用できれば防げたものです。

・妊娠に伴う合併症は世界的に見て15歳から19歳までの女性の主な死因です。

 

● 安全でない中絶

最も状況が深刻なアジア、アフリカとラテンアメリカでは、10件あたり1件の割合で妊娠が中絶により終わります。家族計画を利用しにくいことは望まない妊娠の主原因です。そのため1年に1900万件もの安全でない中絶がなされています。

安全で有効な避妊法を利用できれば、中絶を減らすことができます。貧困地域で安全な医療対応ができるように改善されれば、安全でない妊娠中絶による妊産婦死亡、合併症、遺児になる子どもの数を減らすことができるでしょう。

・毎年6万8000人の女性が、安全でない妊娠中絶が原因で死亡しています。そのほとんどが開発途上国で起きています。

・安全でない中絶は、妊産婦死亡の原因のうち、出血多量、敗血症についで3番目に多い死因です。

・毎年約2億1100万の妊娠のうち4600万件は中絶されていますが、その約60%しか安全な状況でされていません。

 

● 安全な出産ための専門技能者の立会い

全ての女性、豊かであるか貧しいかを問わず、出産の15 %は合併症の危険にさらされています。しかし、大多数の妊産婦の死亡は、次のようなことで防止できています。

・望まない妊娠を減らすための家族計画。

・全ての出産で専門技能者の立会いがなされること。

・合併症を発症したときに時期を逃さず対応できる緊急産科医療。

 

富の偏りは、出産中のケアの質を大きく左右します。国によって、国の中でも大きな格差があります。あらゆる地域に当てはまることですが、安全な出産ための専門技能者の立会いは都市部に比べて、地方ではあまり利用されていません。妊産婦死亡率が非常に高い国では、国のなかで裕福なほうから2割の女性は、貧しいほうから2割の女性の4倍以上も専門技能者の立会いを利用しているのです。

 専門技能者の立会いは開発途上国で1990から2003年までの間に41%から57%とかなり増加しました。マレーシア、スリランカとタイなど、開発途上国の中でも妊産婦死亡率を減らすことに成功した国は、助産婦の訓練への投資を重視し、出産の際の専門技能者の立会いを利用しやすくしました。これらの国では、妊産婦の死亡は7から10年で半分になりました。しかし、サハラ以南のアフリカや西アジアではごくわずかな変化しかみられません。

 

● アフリカでの中絶薬よる妊娠中絶

アフリカでは中絶薬の利用が今後10年間で増加すると予測されます。妊娠中絶が合法であるチュニジアと南アフリカは、2001年に中絶薬であるミフェプリストーンとミソプロストールの使用を承認しました。これらの国では、より多くの女性が、手術での中絶よりも中絶薬の使用を選択しています。

中絶薬をアフリカに普及させようとしている権利擁護団体は、2つの重大な難問に取り組んでいます。ひとつは、中絶薬を実際に入手できないこと、もうひとつは多くの国では法的に妊娠中絶が禁止されていること、です。妊娠中絶を禁止している国では、中絶薬についての権利実現、情報普及や公教育が困難になります。

 

● Sexual Reproductive Health(SRH)

家族計画についての情報、教育とカウンセリングが利用できないために、妊娠する間隔や妊娠しないようにするために避妊の利用の希望をかなえられない女性が1億2千万人もいます。家族計画として避妊法を利用できることは基本的人権であり、女性のエンパワーメントにとって不可欠です。貧困を削減し、子どもの生存状況を改善し、女性の健康を増進するためにも家族計画を普及させることが重要です。女性のエンパワーメント、教育が不足し、経済資源が利用しにくく、また、妊娠中の栄養不足や過重労働の負担が課せられていれば、妊娠・出産時の危険性が高まります。家族計画を利用することで、妊産婦死亡の20から35 %を防げます。

 

● 妊産婦死亡とミレニアム開発目標(MDGs)

2015年までにSexual Reproductive Healthを総合的に享受できるという目標は、MDGsの目標の多くを達成するための基本です。1994年の国際人口・開発会議(ICPD)の行動計画では、世界中の政府は「女性が自分の生殖能力を思い通りにできる可能性」を重要な原則として確立することで合意しました。家族計画と妊産婦のケアを含むリプロダクティヴ・ヘルスへの資金を投入することはMDGsを実現するために不可欠です。

 

MDGs目標5、ターゲット6:

「1990年から2015年の間に妊産婦死亡率を4分の3減少させる。」そのためには次のことが必要です。

・2015年までにSRHについてのサービス、情報と教育を総合的に享受できるよう保障すること。

・全ての女性が自分がいるところで出産前と分娩後に確実に医療を利用できること。

・地域の保健機関に専門技能者を配置することで全ての妊娠が専門技能者の立会いを確実に利用できること。

・妊産婦の健康についてのものだけでなく、基本的公共医療の利用者負担を廃止すること。

・安全でない妊娠中絶による合併症の治療、妊娠中絶後の家族計画のカウンセリングとサービスを含む、妊娠中絶後の良質な治療を受ける機会を保障すること。

・妊娠中絶が法律に反しない状況で、安全で利用しやすい妊娠中絶が提供できるように保健医療従事者を訓練し、配置すること。

・HIV/AIDSとともに生きる女性たちが特に必要とすることに対応すること。たとえば、母乳についてのカウンセリング、母子感染の防止、抗レトロウイルス療法の提供など。

 

● 今、必要なこと

 保健制度が、安全な妊娠中絶を、リプロダクティヴ・ヘルス・ケアにとって不可欠なものとして、提供することが可能であり、実際に提供することは依然として重要であり続けています。経済的に裕福な国は、ICPDで約束した財政的負担をいまだに履行していません。米国政府のGlobal Gag Rule(GGR)のような、安全な中絶を妨害する政策さえ設けられています。GGRは女性が妊娠中絶についての情報やサービスにアクセスすることを制限しました。多くの妊娠中絶についての法律はまだ必要以上に抑圧的であり、女性が望まない妊娠を終わらせたいと思う多くの正当な理由を反映していません。

・各政府はMDGsを実現するために必要な対応を実行しなければなりません。

・米国政府はGGRをはじめとしてMDGsの達成を妨げている政策を撤回しなくてはなりません。より多くの財源が、SRHサービスと教育へ投入されなければなりません。

・若者向けのリプロダクティヴ・ヘルス教育を広めなければなりません

・10年以内に、少なくとも33万4000人の助産婦、14万人の医療専門職と2万7000人の医師が訓練されるか、能力を向上しなければなりません。

・妊娠中絶への対処が国のプログラムと評価の中に取り込まれなければなりません。

 

ロビイングや権利擁護活動に参加されたい方へ:WHO、Ipas、JHPIEGO、AVSCインターナショナル、IPPFなどの機関から既存の技術的な資源を利用できます。新しく設立されたInternational Consortium for Medical Abortion(www.medicalabortionconsortium.org)に参加もできます。

資金提供:Safe Abortion Action Fund(SAAF)に連絡してくださいwww.ippf.org

Sources:WHO、ユニセフ、UNFPA、IPPF、Family Care International、The Mirror、国連Millennium Project、Ipas、WGNRR

Prepared:Carolien CetonとJeanette Jonker (WGNRR)

翻訳 すぺーすアライズ nekoyanagi@mountain.ocn.ne.jp