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●5月28日 女の健康 国際行動デー 2008 の呼びかけ文

2008年の女性と健康国際行動日に向けて、WGNRR作成の戦争とリプロダクティブ・ライツについてのパンフレットを翻訳しました。

戦争は女性の身体を攻撃する。

紛争そのものも止めさせよう。

行動の呼びかけ 
WGNRR The Women’s Global Network for Reproductive Rights より

毎年、テーマを決めて世界各地で女たちが行動を起こしあい連携しあいます。

5月28日 女の健康 国際行動デー 2008 の呼びかけ文より

WGNRR は、草の根の女たちの国際連帯組織です。

戦争は女性の身体を攻撃する。紛争そのものも止めさせよう。

 

● 紛争下や非常事態では、無数の女性が性暴力、虐待、奴隷、拷問、強かんの被害にさらされています。紛争のやむをえない副産物ではなく、止めたり防げるものです。地方、国家、国際機関が政治的責任を確実に果たすよう、行動を起そう。

女性の人性(女性の性や生殖に関する健康)への権利を支援しよう。社会正義の実現を要求しよう。

 

紛争(戦争も非常事態も)は、法の支配や安全や共同体の構造を徹底的に破壊します。

● コンゴ民主共和国の南キブ地方では2007年上半期だけで4,500件の性虐待が報告され、女性の被害者は身体的・心理的な健康被害や、経済的・社会的排除に苦しみます。こうした状況下では、女性の被害者は安全で合法的な人工妊娠中絶のための必須サービスを含めた保健医療を利用できないことがよくあります。現在50カ国以上が武力紛争の最中にあります。女性の権利への侵害があらゆる紛争地帯で報告される今、すぐに行動を起こそう。

 

● 女性の性と生殖に関する権利世界ネットワーク(The Women’s Global Network for Reproductive Rights)は、女性に対する暴力は、紛争の副産物ではないと確信しています。性やジェンダーに基づく暴力は止めることができるし、防ぐことができます。女性の身体に戦いが挑まれることのない世界は実現できるのです。

暴力の被害者が安全で合法な中絶や適切な医療やカウンセリングのサービスを確実に得られるよう行動してください。性やジェンダーによる暴力の被害者に謝罪や補償が果たされるべきです。

立場を表明してください。地方や国や国際的な関係者が責任を持って女性の性や生殖に関する健康と権利を保障するように明確な姿勢を示そうではありませんか。

概要

● 過去20年間以上にわたり、紛争下での女性の権利や安全を守る闘いのために数え切れない運動や構想がありました。しかし紛争は、女性の権利を侵害し、踏みにじり続けています。すべての女性が適切で安全で合法な性や生殖に関するヘルスケアを利用できて当然という信念と目標を達成するために、まず現実に起きていることを、草の根レベルの情報に基づいて理解しなければなりません。紛争が女性の健康に及ぼす影響についての情報を提供してくれる、それぞれの地方の会員に非常に感謝しています。これらの情報は、地方レベルで紛争の重大さや変革の方法を本当に理解するために不可欠です。

 

世界的な数字

● コロンビアでは100人のうち43人の女性が性暴力の被害者です。コンゴ民主共和国では輪強や乳房の切断、ライフルなどの物体の膣への挿入、性奴隷、HIV/AIDSの故意の感染が蔓延したままです。ネパールでは9年に及ぶ紛争で社会的安全がないため若い女性がきわめて早く結婚するよう両親から強要されます。スリランカでは1978年に始まった不妊化手術政策(少数民族や、宗教少数者を減らすための企て)によって、紅茶のプランテーションで働く女性の7割以上が組織的かつ徹底的に不妊化させられています。ケニアでは2007年12月の大統領選挙とその後の暴動の直後に強かんの件数増加が報告されました。2004年12月の太平洋の津波による衝撃的な被害の直後、その地域全体の仮設テントでの性暴力や搾取の報告が増加しました。(参照 www.wgnrr.org 事例分析)

 

各地の会員からの情報提供によると、世界中の紛争状況では様々な関係者が女性や少女たちを虐待し、侵害しています。これらの侵害する男性にとって紛争は性暴力や虐待を行う好機となり、それが咎められないという理由から行われているのです。そのためWGNRRはあらゆる女性への性や生殖に関する健康と権利を保証するために、女性と男性の権力の不均衡をなくすべきだと信じています。女性のセクシュアリティと身体を男性の財産とみなし、女性全体の社会的地位を低めるよう強化しているのは家父長制社会です。

 

女性、平和及び安全保障に関する国連安全保障理事会決議1325号(2000年)は、武力紛争の全当事者に、ジェンダーによる暴力、紛争状況での強かんや性虐待やあらゆる形態の暴力から女性や少女を保護するための特別な対策を講じるよう呼びかけています。

 

● この国連決議は国際合意がされているにもかかわらず、国際人道法ではあいまいな扱いをされています。その主な理由としては、国際的合意が国内政策に組み込まれていないため、国内政策と結びついていないためです。暴力の被害者を支援し、加害者を裁き、処罰するのは本質的に政府の責任です。政府は暴力や差別や不平等のない社会を創ることを最優先すべきです。不平等な制度ならば問題を提起し、挑戦し、変革していくことです。

 

紛争が女性の健康に及ぼす影響

● 負傷や創傷、感染や衛生の欠如、栄養不足や清潔な水の不足。健康への対策が必要です。保健所やクリニックや病院や、その他健康維持に必要不可欠なものが紛争で損壊や破壊され、強奪の被害にあい、良質な医療や薬は確保できず、利用しにくくなります。女性が必要なときに病院を利用できず、たどり着けないために妊産婦死亡率や罹患率が高くなることで紛争は女性の健康に直接的な影響を与えています。女性にとって安全な出産や緊急産科ケア、妊産婦検診、避妊、家族計画、中絶ケアは女性の健康と生存にとって決定的に重要な意味を持っています。

 

性暴力  

共同体全体に屈辱を与え、名誉を汚し、風紀を乱す様々な形態の性暴力があり、民族浄化の戦略としてや、報復の一形態となることもあります。性暴力は相手を傷つけ、支配し、屈辱を与えます。性暴力はその人の身体的・精神的なまとまりを侵害し、被害者はばらばらにされてしまいます。性暴力はすべてを破壊します。

 

● 性暴力の女性の健康への影響は広範囲に及びます。直後の影響としては望まない妊娠やHIVの感染などがあります。性暴力に起因する妊娠により、女性が合法でなく安全ではない中絶を求めることがあります。さらに、性暴力や強かんの被害者は膣や子宮や肛門に重度の損傷を受けることがあり、その損傷は常時の出血や尿もれやフィスチュラ(産科ろう孔)や不妊を引き起こすことがあります。このような悪い結果は女性の健康に一生にわたって影響を与えます。これらの合併症の多くは治療可能ですが、医療支援の不足で女性は苦しみ続けています。性やジェンダーによる暴力が蔓延する紛争下では、安全な中絶サービスやHIV検査やPEP(暴露後感染予防)療法を提供できることがより一層必要です。紛争下での被害者に質の高い中絶サービスを含む、適切で安全で合法な性や生殖に関する医療を利用できることがとても重要になります。

 

HIVとAIDS

安全にHIV検査やPEP処方が得られるよう主張しよう

● 紛争時にHIVの感染拡大が起きる。主に軍隊や武装集団や平和維持軍や民間人による性暴力や虐待の結果です。セックスの強要に避妊の手段もなく、暴力的になるため、身体組織が裂かれたり性器が傷つきHIV感染の可能性がずっと高くなります。強かん被害から72時間以内にPEPが処方されればHIV感染率をかなり抑えられます。残念ながら強かんの被害者のほとんどがこの選択肢を持っていません。PEPを処方するクリニックの不足、行きにくい場所、処方薬の不足、女性が3日以上歩かなければ行けない場所にあることもあります。また、紛争の混乱で、PEPを処方されている女性さえ薬を得る保健所に行けなくなることもあり、治療効果に壊滅的な結果をもたらします。その上、HIVに感染したことは、被害者が耐えてきた残虐行為を常に思い起こさせます。

 

妊娠中絶

● 紛争下での20件の強かんのうち1件が、望まない妊娠を引き起こしている。合法で安全で利用しやすい中絶サービスは紛争下ではほとんど存在せず、非合法で安全ではない中絶を求めざるをえません。

国連の推定では、難民の妊産婦死亡原因の50%もが安全ではない中絶によるものです。また、重度の感染症や失血、外傷や不妊により苦しんでいます。強かんの被害者たちはこれ以上危険にさらされるべきではありません。彼女たちのために正義が回復されるよう、行動しよう。

 

トラウマ、スティグマ、女性の殺害

私は過去を忘れて普通の生活をしたかった。でも記憶を消すことはできない。何をしても改善せず、気が変になりそうでした。

● 性暴力の心的外傷体験は女性の自己意識や自尊心、自分に価値があるという感覚を脅かします。紛争下では移動中や難民キャンプで暴力に多数直面し、トラウマが継続的になることがあります。性暴力の被害者は繰り返し恐怖や悪夢や心因性の痛みを経験し、自殺の危険性が高くなります。

 

強かんや性暴力被害は、夫や共同体全体からの拒絶を意味します。強かんを女性の責任とする社会もあり、女性の服装のせい、女性は抵抗すべきなどの見方です。家父長制社会の中で、強かん体験のある女性には結婚の機会が減ります。強かんを生き延びた女性は社会から追放され、孤立し、拒絶されます。夫がいないために、極端な社会的・経済的困難に苦しむことになります。

 

ある文化では強かんや性虐待の被害者が、自分の親族からさらに暴力を受けます。家族の恥と見なされると「名誉殺人」が起きます。被害は女の責任だとして一族により殺されます。女性を殺害することはパレスティナやアフガニスタンなどの紛争地域で特に問題となっています。

 

被害にあった人たちが生きてゆく上での不安を少なくするために、トラウマのカウンセリング、シェルター、補償、そして収入をもたらす活動が提供されなければなりません。

 

持続的な健康への影響

強制売春、人身売買、性奴隷

● 女性は政府軍からも反政府勢力からも拉致され、性的に残酷な目にあう現実があります。西アフリカのシエラレオネでは激しい内戦が続き、1999年の政府調査では、2,000人以上いる売春婦のうち37%が15歳以下で、ほとんどが紛争下で強制移動を体験していました。紛争は女性が家族の世話も、家族を支える生計を担う状況へも追いやります。貧困や女性の社会的地位が低いことから、生き延びようとする女性を売春へと追いやり、人身売買される女性の数を増加させています。人身売買や性奴隷や強制売春は、性感染症やHIV感染、望まない妊娠や性暴力の危険にさらします。

 

強制移住させられた女性

● 紛争が起きると自宅や共同体から強制的に退去させられる女性やその家族。2004年の国連の推計では、世界中で3,400万人の女性が社会的に脆弱な状況におかれ、どの難民や強制退去人口でも80%ほどを占めています。妊娠に関係した合併症や死亡の危険、安全でない中絶の危険性、性暴力、HIV/AIDSの危険性が高くなっています。国内避難民キャンプや難民キャンプは女性への健康サービスを提供できず、女性を性暴力や強かんからほとんど保護できていません。そこでの法の支配の低下や不処罰の環境は、性やジェンダーに基づく女性への暴力を助長しています。キャンプが安息の地であるというイメージはまやかしです。紛争下にある女性たちには安全であると感じられる場所が必要ですし、つくっていかなければなりません。

 

平和維持活動と人道支援

● 人道支援要員や国連平和維持軍も、紛争下での性暴力や女性の搾取に関与してきました。最も弱い立場に置かれた人々を支援する任務の人たちが、自分たちの立場や権力を濫用して、女性の健康に破壊的な結果をもたらしています。カンボジアでの国連軍兵士が地元の女性の性搾取に積極的に関わり、HIV/AIDSを感染させ、感染を広めていることについて、国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)の明石康事務総長は「男の子はやっぱり男の子だ」と発言ましたが、恥ずべきもので信じがたいものです。国連平和維持軍兵士たちが男女平等教育を受け、HIV検査を受け、コンドームを提供されるよう要求します。国連の監視団はその戦略の中に国連安保理1325号決議を完全に取り入れるべきです。

 

暴力の文化

● 家父長制文化と女性の社会的地位が低いため、紛争下では女性は侵害されやすい。加えて、警察や法改革の欠如は暴力の文化を持続させています。性暴力をなくすためには警察や法の改革が緊急の課題です。警察はドメスティック・バイオレンスや性暴力に対応すべきで、届出される強かんは捜査され、加害者は裁判にかけられなければなりません。法改革は加害者が効果的に起訴され、声を上げる女性の困難を認め、サポートや証人保護やリハビリを提供すべきです。法制度は手ごろな料金で利用しやすく、誰でも利用できるものであるべきです。

国際合意

★1979年の国連女性差別撤廃条約と1999年の選択議定書は、あらゆる国に「女性に対する暴力を撤廃する」政策を求めている。

★1998年の国際刑事裁判所のローマ規程は強かんや性奴隷、強制妊娠を含むあらゆる形態の性暴力を戦争犯罪、そして人道に対する犯罪と定めている。

★1993年の旧ユーゴスラヴィア国際戦犯法廷における規程と1994年のルワンダ国際戦犯法廷における規程の両方が、性やジェンダーに基づく暴力を戦争犯罪かつ人道に対する犯罪と認めている。

★国連の非常事態と紛争下の女性と子どもの保護に関する宣言は、女性や子どもたちを戦争の被害から救出し、特に女性や子どもに危害を加えるために考案された攻撃を明確に禁じています。

★人間と人民の権利に関するアフリカ憲章(2005年)での女性の権利に関する規程は、国際法においてはじめて明確に、強かんや近親かんによる妊娠の場合、あるいは妊娠の継続が母体の健康や生命に危険を及ぼす場合に女性が中絶をする生殖に関する権利を持つと明言している。

★国連ミレニアム宣言(2000年)はあらゆる形態での女性に対する暴力と闘うと同時に、上記の条約のいくつかを支持するよう誓約しています。

 

社会正義への私たちの要求

★シェルターやトラウマ・カウンセリング、ヘルスケア、職業訓練、法的代理人のためのセンターを提供すること。

★地方の指導者や宗教的、あるいは信念に基づくグループやその他のグループと協力して被害者を支援する共同体を築くこと。

★暴力の連鎖を破るために、加害者への支援やリハビリを提供すること。

★性暴力の被害者に証人保護プログラムの利用を確保すること。

 

法的正義へ

★女性を差別する法律を見直し改正する。

★国際条約や国際的合意を批准し、女性の人権を強化する国内法規を起草する。

★判事、弁護士、警察官など刑事裁判制度に関わる人々の能力を高め訓練する。

★あらゆる形態の性暴力と強かんが非合法の犯罪であり、加害者が確実に法の場で裁かれるようにする。

★特に裁判官などの高い地位に多くの女性が参加できるよう策を練る。

 

医療の場で正義が手に届くよう!

★強かんや性虐待の被害にあった人が、安全で合法な中絶サービスを困難なく確実に利用できるようにする。

★あらゆる女性や少女たちに、避妊や中絶や妊産婦検診を含む生殖に関するヘルスケアや権利を知らせ教育する。

★性暴力の被害にあった人に、PEPの処方やその他性感染症の治療がすぐに手に届くよう保証する。

 

安全の保障!

★あらゆる女性や少女たちは家や共同体で安全であると感じられるべきです。

★女性を二級市民とし、暴力の文化を助長するのは社会の権力構造です。政府は暴力や差別や不平等のない社会を達成することを最優先すべきです。

★ジェンダーの視点、兵士のHIV検査、性や生殖に関する健康と権利サービスは、あらゆる平和維持活動や救出活動に最初から含められるものです。女性、平和及び安全保障に関する国連安保理決議1325号の実施は、よい出発点になる。

 

性と生殖に関する健康と権利が、紛争管理や紛争解決の政策過程で検討課題となるように要求します。

 

★平和機構、使節団、交渉、災害や緊急事態の管理に女性の代表を参加させる。

★国の規制やプログラムやプロジェクトを通して合法な中絶や避妊へのアクセスを含めた性や生殖に関する健康と権利の教育やサービスを実施する。

★和平合意において性や生殖に関する健康と権利についての条項を入れる。

★紛争地域での性や生殖に関する健康と権利の侵害を監視し記録する。

 

私たちにできること

★責任逃れを止めさせる。女性や少女の身体に対する戦争を止めさせる行動の中で、地方、国、国際的な各レベルで関係者に問題に対処するために必要な対策を講じるように訴える。

★スティグマ(烙印)を消す。教育や情報を提供する地方や共同体を中心にした展開策が必要です。同時に影響を受けた女性が共同体内で生計を立てられるように、新たな仕事や技術を教える。

★女性や共同体全体が性暴力について話すことを禁じる文化的スティグマや社会的障壁を崩すために行動しよう。

 

「恥から逃れるためには、その日に殺されてしまったほうがましだった。」

 

★女性に対する暴力の本質や発生率、そして詳細の欠如が、サービスの提供や、公の支援を制限します。したがって、紛争の状況を正確に表す調査やデータ収集ができるように、性暴力のタブーを終焉させて女性たちが自分たちの経験を自由に話せるようにしなければなりません。

★女性に対する暴力の主要な加害者は男性です。ということは、男性は女性に対する暴力をなくす展開の重要なパートナーでもあります。男尊女卑(ジェンダー)による暴力をなくす運動に男性を巻き込んでいくことが必要です。男性はジェンダーが理由の暴力をなくし、HIV感染を抑制する上で重要な役割を果たします。

★女性のニーズを満たすためにあらゆる機関同士で効果的に提携し、対応しよう。

★女性と医療従事者の役に立てるように地元の医療従事者の能力を高めよう。

★性暴力の被害者に金銭的補償をするようロビー活動をしよう。

★女性の人権を実現し、性やジェンダーを理由とした暴力から女性を守るために、国連安保理決議1325号や北京行動綱領を実施するよう自国政府にロビー活動しよう。

★女性が平和構築過程に平等に関わることができるよう要求しよう。

訳文:すぺーすアライズ

連絡先:すぺーすアライズ allies@crux.ocn.ne.jp