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●妊産婦死亡とドメスティック・バイオレンスの怖い関係

2008年2月15日

妊産婦死亡とドメスティック・バイオレンス

 国連ミレニアム開発目標の目標5「妊産婦の健康改善」のターゲットである「妊産婦死亡率を2015年までに4分の3減少させること」の達成について、その達成が危ぶまれるなか、日本ではG8に向けてその解決策として、保健システム強化やケア提供能力の強化、ケアの連続性、助産婦中心アプローチに目が向けられています。 

 しかし、世界中に蔓延するドメスティック・バイオレンスと妊産婦死亡との関係は、これまであまり直視されてきませんでした。

 日本国内では、2008年1月11日の改正DV防止法施行直後の1月16日、茨城県つくばみらい市において、同月20日に開催が予定されていた、ドメスティック・バイオレンス(DV)をテーマにした男女共同参画講演会タイトル「自分さえガマンすればいいの?—DV被害実態の理解と支援の実際」)が突然中止されるという事件が起きました。

「DV防止法:反対団体の抗議で講演会中止 つくばみらい市」@毎日新聞(1/18)http://mainichi.jp/select/today/news/20080118k0000e040081000c.html

「抗議受け市の講演会中止に DV被害支援めぐり」@MSN産経(1/17) http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/080117/crm0801171225014-n1.htm

「DV防止法講演会 団体抗議で中止に つくばみらい」@東京新聞茨城版(1/18)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/ibaraki/20080118/CK2008011802080348.html

 1989年、カナダの大学で、ある男性学生が理系の大学で女性学生のみを選んで14人射殺したという痛ましい事件が起きました。いまだに女性が、女性であるという理由で殺される、死ななければならないということが国内外で後を絶ちません。女性運動を続けていかなければならない理由がここにあります。

 女性に対する暴力をなくしていくことについては、日本も批准した1979年の女性差別撤廃条約のなかで確認され、1993年の世界人権会議で女性の権利が人権であることが確認され、女性に対する暴力撤廃宣言が出され、1995年第4回世界女性会議などでも確認され、このような前進が国際的潮流ともなっています。日本でもこのような国際的潮流に合流して、内閣府をはじめとする各省庁が男女共同参画の実現のための一環として、女性に対する暴力に取り組み、DV防止法が制定、改正されてきました。DV防止法では市町村にも基本計画の義務があり、今回の講座は、男女共同参画社会基本法や条例、DV防止法の啓発の一環でした。つくばみらい市での公演中止に抗議し、改めて実施を求めます。www.againstgfb.com/tsukubamirai_facsimile.pdf  

 女性の命や人権を軽視することは、グローバル・ギャグ・ルールの制定やミレニアム開発目標へのリプロダクティブ・ヘルスサービスへの普遍的アクセスの保障の追加に対して徹底的抵抗をして、女性に対するテロを仕掛ける米ブッシュ政権だけでなく、日本社会の課題でもあるのです。

 このような問題意識から、2年ほど前に発表された「妊産婦死亡とドメスティック・バイオレンスの恐るべき関係」を紹介させていただきます。この課題を皆様と共有できれば幸いです。

 

妊産婦死亡とドメスティック・バイオレンスの恐るべき関係 

(“Maternal death due to domestic violence” PAHO、Pan American Health Organization作成 2005年7月Fact Sheet)

 ドメスティック・バイオレンスと、開発途上国の不相応にも高い妊産婦死亡率の両方ともが、世界的な公衆衛生の課題として認識されています。各国政府は、すべての妊娠している女性に必要なケアを提供することと、女性に対するあらゆる種類の暴力をなくすことに向けての必要な施策を実施することを公約しました(1)。

 ドメスティック・バイオレンスが原因で起きる妊産婦死亡がどの程度の割合を占めるのか、国による違いはあるのか、どんな要因がその違いを説明できるのかはまだわかっていません。しかし、妊娠中や産後にドメスティック・バイオレンスによって死亡する女性がいることが報告され続けており、ドメスティック・バイオレンスと妊産婦死亡が関連性があることを示しています。人口統計学や健康調査が、妊娠中に身近なパートナーからの暴力を被る割合が有意に多くなると示してきたことを改めて指摘すべきです(2)。女性の致命的な直接的な外傷、死に至らしめる産科合併症をもたらす腹部の外傷、精神的なストレスまたは女性への支配は、ドメスティック・バイオレンスが妊産婦死亡を引き起こす大きな原因であり、主要なメカニズムです。

「死に至るメカニズム」

a 女性の致命的な直接的な外傷
 身近なパートナーによる妊娠中の女性の殺害(femicide)と、妊娠中や産後の女性の自殺は、世界中で文書としても報告されてきました。しばしば望まない妊娠は、このような暴力的な死という結末に大きく結びついています。(3)。

 アメリカ合州国(1990〜1991)のいくつかの州では、ある調査によれば、望まない妊娠をした女性は、身体的に攻撃されるか殺害される危険性が3倍高くなります。

 1976-1993年のバングラデシュのMatlabでは、ある調査によれば、妊娠した若者は妊娠していない若者よりも自殺の危険性が高いことが明らかになりました(4)。

 メキシコのモレロスでの、安全でない妊娠中絶による死亡についての研究は、2001年の1年間、妊娠した女性の暴力的な死の最高15%までが望まない妊娠によるものでした。その調査には、妊娠していると判明した後に自殺した若者の事例が挙げられています(5)。

b 死に至らしめる産科合併症をもたらす腹部の外傷
 妊娠中や産後の女性が、腹部の外傷によって引き起こされる産科合併症によって死ぬこともあります。例えば、外傷が出血、胎盤早期剥離のような産科合併症は女性、胎児の死につながります。
 カナダのブリティッシュ・コロンビア州(1999〜2000)では、ある調査により妊娠中に虐待されると、分娩前の出血につながってしまう可能性が最高で3.5倍も高くなることが判明しています(6)。
 同じ研究では、妊娠中に虐待された女性は、周産期死亡の可能性が7倍以上も高くなることが示されています(6)。

c 精神的なストレスまたは女性への支配
 ストレスと恐怖に満ちた環境も悪い結果を招きます。女性によるある種の危険な行動や、暴力加害者による支配的な言動を通して、ストレス(例えばホルモンの反応)によって引き起こされる生理的反応を通して、産科的な悪い結果につながります(7)。女性の自己決定能力や行動の支配(例えば、部屋に閉じ込める、外出を禁止する、経済的支援を制限するなど)によって、女性たちは合併症が起きたときに援助を求めにくくなっています。
 しかし、「ドメスティック・バイオレンスによる妊産婦死亡」は、妊産婦死亡研究に充分に位置づけられてきませんでした。
 残念ながら妊産婦死亡の定義も、妊産婦死亡率を推算する公式もドメスティック・バイオレンスによるものを対象としていません。そのため、ドメスティック・バイオレンスがどのように妊産婦死亡に影響しているかについて正確な情報を集め、適切な判断をすることができませんでした。それにもかかわらず、使われる定義や測定方法の実施について大きな議論をせず、ドメスティック・バイオレンスによる妊産婦死亡例の存在に焦点をあてた研究が存在します(8)。したがって、ドメスティック・バイオレンスを妊産婦死亡の原因として考えていく妊産婦死亡の包括的な定義と、幅広い疫学的研究が必要です。

 開発途上国で生きる女性は、ドメスティック・バイオレンスによる妊産婦死亡について、より大きな危険を負っています。

 ドメスティック・バイオレンスを原因とする妊産婦死亡は世界中のどこででも起きています。しかし、男性への従属が強く、法律や警察による保護が脆弱で、望まない妊娠を予防し対処する選択肢が乏しいため、開発途上国の女性にとっては、ドメスティック・バイオレンスによって妊産婦が死亡する危険性は高所得国よりも高くなります。

全米健康機関(PAHO/WHO)の役割
 過去数年間、この報告書を作成しているPAHO/WHOは、ラテンアメリカとカリブ海地域でドメスティック・バイオレンスに関して広範囲な研究と行動をしてきました。1995〜1997年の研究を通して、PAHO/WHOは、介入の優先度の設定、ドメスティック・バイオレンスと結びつく個人と社会レベルでの多数の要因の特定、ドメスティック・バイオレンスの悪循環を打破しようとする女性の「クリティカルパス」の特定などに貢献してきました。PAHO/WHOは、ラテンアメリカとカリブ海地域でドメスティック・バイオレンスと妊娠・周産期の健康の関連性とその大きさを調査することに努力しています。

 ドメスティック・バイオレンスと妊産婦死亡のむすびつきのデータを出すことによって、ドメスティック・バイオレンスと妊産婦死亡双方についての包括的アプローチのための、「妊産婦の健康Safe Motherhood」と「ジェンダー公正Gender Equity」を結び付けた展開の枠組みを開発することを促進するでしょう。現在の妊娠中の暴力を防ぐための行動は、2015年までに妊産婦死亡率を75%削減するというミレニアム開発目標(MDG5)を達成し、ひいてはジェンダーの公正Gender Equityに向けて重要な前進を遂げる早道になるでしょう。

 

References
1. United Nations, Division for the Advancement of Women (DAW). Convention on the Elimination of All Forms of Discrimination against Women (http://www.un.org/womenwatch/daw/cedaw/text/econvention.htm). Retrieved on August 1, 2004.
2. Ellsberg M., Heise L., Pena R., Agurto S., Winkvist A., “Researching domestic violence against women: methodological and ethical considerations.” Stud Fam Plann 200; 32(1):1-16.
3. Gazmararian JA., Adams MM., Saltzman LE., Johnson CH., Bruce FC., Marks JS., Zahniser SC., “The relationship between pregnancy intendedness and physical violence in mothers of newborns.” The PRAMS Working Group. Obstet Gynecol. 1995; 85(6):1031-8.
4. Ronsmans C., Khlat M., “Adolescence and risk of violent death during pregnancy in Matlab, Bangladesh.” Lancet. 1999; 354 (9188):1448.
5. Walker D., Campero L., Espinoza H., Hernández B., Anaya L., Reynoso S., Langer A., “Abortion deaths in Mexico: a case of misclassified second trimester deaths.” Reproductive Health Matters. Forthcoming 2005.
6. Janssen PA., Holt VL., Sugg NK., Emanuel I., Critchlow CM., Henderson AD., “Intimate partner violence and adverse pregnancy outcomes: a population-based study.” American Journal of Obstetrics and Gynecology 2003; 188(5):1341-7.
7. Langer A., Hernández B., García C., Saldaña G., “Identifying interventions to prevent maternal mortality in México: a verbal autopsy study.” In Berer M., Sundari T., editors: Reproductive Health Matters. Safe motherhood initiatives: critical issues. London: Blackwell Science; 1999.pp.127-136.
8. Espinoza H., Camacho V., “Maternal death due to domestic violence:
Unrecognized critical component of maternal mortality.” Rev Panam Salud Publica / Pan Am Health Journal. February 2005, Vol. 17, No. 2. 123-129.
9. Sagot M., Shrader E., La ruta crítica de las mujeres afectadas por la violencia intrafamiliar en América Latina. Estudios de caso en diez países [The critical path of women affected by domestic violence in Latin America. Case studies in ten countries]. Washington, DC: Pan American Health Organization, 2000.
July 2005 

 

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