- 経済問題
経済は、人々の健康に深刻な影響を及ぼします。公正、健康、福祉を最優先とする経済政策によって、人々の健康も経済も向上させることができます。
資本家の要求に優先的に対応しようとする政治、金融、農業、産業政策は、人々の生命や生活を阻害します。地球全体に波及する経済的グローバリゼーションや自由化の過程で、国ごとの、または国内の格差は拡大してきました。世界の多くの国は、特に権力を持った国は、自国の立場を強化し、拡大するために、経済制裁や軍事介入という手段を利用し、それによって、人々の生活に破壊的な影響をもたらしています。
この憲章は、世界の人々に次のことを呼びかけます。
★人々の社会的、環境的、経済的そして健康の権利を侵害することを阻止し、途上国に有利になるような差別化ができるよう、世界貿易機関やグローバルな貿易システムの変革を要求すること。公衆衛生を保護するためには、これらの変革は、特許権や貿易関連知的所有権協定(TRIPS)のような知的財産権の枠組みの改革まで必要です。
★いわゆる第三世界の負債を帳消しにするよう要求すること。
★世界銀行(WB)や国際通過基金(IMF)が、途上国の権利や利害を反映し積極的に促進するようになるよう、抜本的な改革を要求すること。
★多国籍企業が、人々の健康に悪影響を及ぼさぬよう、従業員を搾取しないよう、環境を破壊しないよう、国家主権を侵害しないような、効果的な多国籍企業規制を要求すること。
★政府が経済市場の要求ではなく、人々の要求に合わせた農業政策を実施し、政府が食糧安全保障と、食物が公正に人々の手に渡るように保障できるようにすること。
★知的財産権についての法律で、人々の健康を保護する行動をとるよう各政府に要求すること。
★投機的な国際的な金融取引への規制と課税を要求すること。
★すべての経済政策が、健康、公正、ジェンダー、環境への影響が査定され、遵守を確保できる強制力のある、規制措置が伴うよう主張すること。
★経済成長最優先の経済理論に異議を唱え、人間的な持続可能な社会を創出するような理論に転換させること。経済理論は、もっと環境的制約、公正さや健康の基本的重要性、無報酬の労働、特に労働としてさえ認識されていない女性たちの労働の貢献を認識すべきです。
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社会的、政治的問題
包括的な社会政策は、人々の生命や生活に肯定的な影響を与えています。経済的なグローバリゼーションと民営化は、人々のつながりや、家族や文化を深く破壊してきました。どの地域においても、女性たちは社会の構造を保持するのに不可欠な役割を担ってきましたが、女性の基本的ニーズはしばしば無視され、否定され、彼女たちの権利と人格は侵害されています。
公的諸制度は蝕まれ、弱体化させられています。その責任の多くは、民間部門、特に企業や国家的または国際的な組織にゆだねられ、そのような機関は人々に対する責任をほとんど果たしていません。さらに、保守的で原理主義的な勢力は強まっているのに対して、政党や労働組合の力は極端に弱体化してきています。政治組織や市民組織では参加型民主主義が反映されるべきです。そこで透明性と説明責任を育て、確実なものとすることが緊急に必要です。
この憲章は世界の人々に次のようなことを呼びかけます。
★人々の完全な参加が保障された包括的な社会政策の開発と実施を要求し支援すること。
★すべての女性とすべての男性は、労働と生活、および表現の自由、政治的参加、宗教的選択、教育の機会、暴力を受けないことについて、平等な権利を持つよう保障すること。
★人々の身体的・精神的な健康と、社会の周縁に追いやられてきた人々の人権を、守り発展させていくための法律を導入し実施するよう政府に要求すること。
★教育と健康が最優先の政治課題になるよう要求すること。この要求は、すべての子どもと大人、特に少女や女性向けの無料の良質の義務教育と、良質の保育とケアを要求するものです。
★保育サービス、食糧配給システム、住宅供給のような公的制度の活動が、個人や地域社会の健康に資するよう要求すること。
★もともとの土地、家、仕事から人々を強制的に移住させるいかなる政策も非難し、その転換を要求すること。
★人々の権利と自由を、特に女性や子どもや少数者たちの生命を脅かす原理主義勢力に対抗すること。
★セックス・ツーリズム(買春産業)と、女性や子どもの世界的人身取引に反対すること。
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環境問題
水と大気の汚染、急激な気候変動、オゾン層破壊、核エネルギーと廃棄物、有毒な化学物質と殺虫剤、生物多様性の消失、森林破壊と土壌浸食は、人々の健康に甚大な影響を及ぼしています。この破壊の根本的な原因には、天然資源の持続不能な搾取、長期的包括的な視点の欠如、個人主義的利益最大化的行動の普及、裕福な人たちの過剰消費が含まれます。この自然破壊には直ちに効果的な対策が実行され、転換させなければなりません。
この憲章は、世界の人々に次のことを呼びかけます。
★多国籍、国内企業、公的機関、軍隊に、環境や人々の健康に影響を及ぼす破壊的で危険な活動についての責任をとらせること。
★すべての開発プロジェクトが、健康と環境への基準によって評価されるとともに、いかなる技術や政策も健康や環境に潜在的脅威になるような場合には、いつでも警告や制限が加えられるよう要求すること。(予防原則)
★各政府が有害で不適切な技術や手段に頼らず、国際的な気候変動の合意よりも厳格に、自分たちの領土において、温室効果ガスの削減に早急に対応するよう誓約するよう要求すること。
★有害な産業や有毒な放射性廃棄物が、より貧しい国々や周縁化された人々の地域に移されることに反対し、ごみの生産量を最小化するよう解決策を推進すること。
★「北」でも「南」でも、過剰消費と持続不可能な生活様式を削減すること。工業化された豊かな国々に、消費と公害を90%まで削減するよう圧力をかけること。
★労働環境への労働者中心の監視も含む、職場での健康と安全を保障する方策を要求すること。
★職場、コミュニティ、家庭での事故やけがを予防する方策を要求すること。
★生命特許を拒否し、伝統的で土地固有の知識と生物資源への盗賊行為に反対すること。
★環境的、社会的発展についての人間中心的、地域社会を基盤にした指標を開発し、環境破壊と人々の健康状態を測る定期的な監査の方法を考え出し、採用するよう働きかけること。
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戦争、暴力、紛争、自然災害
戦争、暴力、紛争、自然災害は人々のつながりや暮らしを荒廃させ、人間の尊厳を破壊します。それらは、そこで暮らす人々、特に女性と子どもたちの身体的、精神的な健康に深刻な影響を及ぼします。武器調達の増加と侵略的で腐敗した国際的武器取引は、社会的、政治的、経済的な安定性と資源の社会部門への分配を蝕みます。
この憲章は、世界の人々に次のことを呼びかけます。
★平和と軍備縮小に向けたキャンペーンと運動を支援すること。
★武力侵略、大量破壊兵器や、あらゆるタイプの地雷を含むその他の武器の研究、製造、実験、利用に反対するキャンペーンを支援すること。
★公正で恒久の平和を、特に内戦や大量虐殺を経験した国々で、達成するために人々の主導を支持すること。
★軍隊による子ども兵士の利用と、女性や子どもへの虐待やレイプ、拷問、殺人を非難すること。
★人間の尊厳への最も破壊的な道具の一つとしての占領を、終わらせるよう要求すること。
★人道援助介入の軍事化に反対すること。
★国連安全保障理事会が民主的に機能するよう抜本的な改革を要求すること。
★国連と加盟国は、いかなる形でも国際的制裁として市民の健康を害することをしないように要求すること。
★近隣や地域社会や都市の平和を、武器がない地域として宣言する、自主的で人々を中心にすえた行動展開を奨励すること。
★特に男性の中での攻撃的で暴力的な行動を阻止し、減らし、平和的共存を促進する行動やキャンペーンを支援すること。
★自然災害を予防し、その結果起きる人的被害を減らす行動やキャンペーンを支援すること。
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人々を中心にすえた健康セクター
この憲章は、支払能力に関わりなく、普遍的で包括的なプライマリ・ヘルスケアの供給を要求している。保健サービスは、民主的で、達成するのに充分な資源とともに説明責任を果たすものでなければならない。
この憲章は、世界の人々に次のことを呼びかけます。
★ヘルスケアを民営化し、健康を「商品」に変えてしまう国際的、国内的な政策に反対すること。
★政府が、無料で普遍的なアクセスを保障できるよう、健康課題に取り組み、公衆衛生を組織化する最も効果的な方法として包括的なプライマリ・ヘルスケアを促進し、予算をつけ、提供するよう要求すること。
★政府に国の保健及び医薬品政策を採用し、実施するよう働きかけること。
★政府が公的保健の民営化に反対し、慈善団体やNGOによる医療サービスを含む民間医療部門への効果的な規制を保障するように要求すること。
★貧しい人々に資するような方法で保健課題に取り組み、縦割りのアプローチを避け、部門相互の共働を保障し、WHOの世界健康総会に市民組織を参加させ、企業の利害から独立を保つようWHOの根本的な変革を求めること。
★患者や消費者の権利を含め、すべてのレベルの健康についての意思決定において、人々の権利やコントロールを促進する活動を促進し、支持し、取り組むこと。
★伝統的で心身一体的なシステムと、実践者と、それらのプライマリ・ヘルスケアへの統合を支持し、価値を認め、促進すること。
★医療保健従事者たちが、より問題と取組み解決する意欲があり、実践的になり、その現場での世界的課題の影響をより理解し、コミュニティとその多様性とともに活動し、尊重するよう、地域社会とともに働き、その多様性を尊重するような人になることを促進できるよう、医療保健人材の養成制度の改革を求めること。
★医療や健康技術(薬物を含む)についてわかりやすく説明し、それらの技術が人々の健康のニーズに従うよう要求すること。
★遺伝子研究、薬剤や生殖技術の開発を含む、健康分野の研究は、説明責任を負える機関によって、参加的で、ニーズにしたがった方法で実行されるよう要求すること。それは、人々の健康と公衆衛生指向で、普遍的な倫理原則を尊重したものでなければなりません。
★性と生殖に関する自己決定権を支持し、人口と家族計画政策におけるあらゆる強制的な方法に反対すること。この支援は、生殖の調整についてのあらゆる安全で効果的な方法を利用できる権利を含んでいます。
- 健康的な世界ための人々の参加
強い人々の組織と運動こそ、より民主的で、透明性があり、説明責任を果たす意思決定過程には根本的に重要になります。人々の市民的、政治的、経済的、社会的、文化的権利が保障されることは不可欠です。政府は、健康と人権をより公正な方法で促進する責任を負っていますが、幅広い市民社会とグループと運動とメディアは、政策立案やその実施状況の監視において人々が関与できるよう、促進する重要な役割を担っています。
この憲章は、世界の人々に次のことを呼びかけます。
★分析と行動の基礎となる人々の組織を創り、強化すること。
★あらゆる段階での、公的なサービスの決定過程への人々参加、これを促進する運動を促進し、支援し、関わること。
★健康に関係する地方の、国内の、国際的集会に、人々の組織が参加できるように要求すること。
★人々を中心にすえた連帯ネットワークを世界中に設けることを通じて、参加型民主主義に向けた地域の活動展開を支持すること。
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翻訳提供:すぺーすアライズ